ER Turbo Engine Swap / Field Manual

エンジン載せ替え
実作業マニュアル

カブリオレ(FA・ER型NA)にターボII用ERインタークーラーターボを載せる作業を、 手を動かす順番で書いたもの。
骨格は2000年に実際に同じ換装をやり遂げた先人の12日間の記録。それを日記から手順に組み直し、 純正パーツカタログの分解図と部品差分の実データを重ねてある。
チェックリストが欲しいときは 換装手順書へ。こちらは「どう動かすか」を書いた方。

実績 12 DAYS
延べ 20 MAN-DAYS
ER → ER
00

この手順書の使い方HOW TO READ

この作業には2つの読み方が要る。日順で読むと「今日はどこまでやるか」が分かり、 系統別で読むと「燃料ラインは結局どうなっているのか」が最後まで通して分かる。同じ内容を両方の切り口で載せてある。

日順で読む(D1〜D12)

先人が実際に進めた順番。1日の作業量その日に必ず終わらせておくことが分かる。 はじめて読むならこちら。

系統別に読む(燃料・電装・冷却…)

作業中に「この配管は何本で、どこを通すんだったか」を引くための章。 手が汚れている時に開くのはこちら。

数字の出どころを分けて書いてある

時間や本数には「先人の実測」「本手順書の見積り」が混ざる。混ぜると危ないので、 実測と付いているものは記録に書かれていた数字、 見積りと付いているものはこちらで置いた数字、と区別してある。

01

成立する根拠WHY IT BOLTS IN

「載る」と言い切れる理由が3つある。感覚ではなく、カタログの実データと先例で裏が取れている。

① 受け側が同じ
② ミッションも同じ
③ 同型式なので車検が通る
逆に、丸ごと移植が要るもの
見落とすと詰むもの
02

全体工程と作業時間SCHEDULE / 先人の実測と本手順書の見積り

先人は2000年4月22日から6月11日まで、実働12日でやり遂げている。 本人の総括は「実質約10日程、延べ20人てところ」。日によって人数が1人〜4人と変わるので、 人日で見ると実感に近い。開始は朝9時、終了は18時(昼食1時間)と記録にある。

やったこと人数実働人日
D1カブ側を開けてNAエンジンを摘出。タンクとダッシュボードも降ろす28h2.0
D2ドナーの内装を剥がし、室内を這う燃料パイプ3本を取り出して移植28h2.0
D3燃料タンク取付・チューブ交換・電磁ポンプ設置(午後のみ)24h1.0
D4室内配線の整理、清掃、エンジンルームを研磨剤で磨く1–28h1.5
D5小物・カプラーのステー移植(ハンドナッター)/並行でドナー解体48h4.0
D6ドナーからエンジン降ろし→クラッチ・レリーズ・タイベル交換→洗浄→搭載38h3.0
D7ACG・コンプレッサー・クーラー配管・ラジエター・IC搭載可否の判断28h2.0
D8エアコン配管・ヒューズボックス結線・油脂充填・電装・顔回り28h2.0
D9ダッシュボード復旧・内装戻し・試走28h2.0
D10–12電装の詰め(ブースト計・ランプ不点灯の追跡)、フォグ配線、スイッチ製作112h1.5
実働12日 実測80h21.0

この計画の条件だと、ここが変わる

先人はドナードナー車1台だけを持っていて、そこから全部を剥がしながら進めた。 こちらはドナー車に加えてER型エンジン一式が別に手元にある。差はこう出る。

短くなる:D6の「ドナーからエンジンを降ろす」工程が要らない(エンジンは既に単体)。 その分、降ろす前に台上でクラッチ・レリーズ・タイミングベルト・シールを交換しておけるので、 載せてからバラす事故が減る。先人も結局この順でやっている

長くなる:ドナー車からハーネス・小物ステー・燃料配管・排気系・ACGブラケットを回収する作業は同じだけ要る。 しかもハーネスクリップ154点を1つずつ拾う手間が乗る。 解体は「降ろす」より「拾う」方が時間を食うと考えておく。見積り

03

順番を間違えないSEQUENCE / 後戻りが発生する3つの分岐

この作業で時間を失うのは、たいてい「先にやっておけばよかった」という順番の問題。 先人の記録から、後戻りが実際に起きた場所を3つ抜き出す。

① センタービームは「先に」外す 付けたままだとチェンジエクステンションのエンジン側が抜きにくい。 先人は付けたまま進めて手こずり、「エンジン載せる時は結局外して付け直した」と書いている。最初から外す。
② ドナーの部品は「もう一度使う物」として外す クーラーのエバポレーター接続部の形状が違うことに配管してから気付き、 室内側ユニットごとドナーのものを使うことになった。既に剥ぎ取った後で拾い集める羽目になっている。 先人が本文中で唯一「教訓」と明記したのがこれ。
③ ヒューズボックスは最後に付ける ダッシュボードを組む工程で、「ヒューズボックスは最後に取付けるのが手順らしい」と書かれている。 先に固定すると配線を正規の位置に落とせない。
実作業

日順の手順DAY BY DAY / CLICK PHOTO TO ZOOM

DAY 1

カブ側を開けて、NAエンジンを摘出する

8h / 2人
今日のゴール:カブリオレからNAエンジン+ミッションを降ろし、燃料タンクとダッシュボードまで外して、 空っぽのエンジンルームと室内を作る。
  1. エンジンルームの外側から順に外す。灯火類 → バンパー → グリル → ボンネット → バッテリー → 配線類 → リザーバタンク → バルクヘッド → ラジエター → エアコンコンデンサー → コンプレッサー → ACジェネレーター → エアクリーナー。 ここは「結構簡単」と記録にある
  2. 続けてコントロールボックス・エアクリーナー・エア関連パイピングを外す。
  3. リフトアップして下回り。エキゾーストパイプ → チェンジロッド → チェンジエクステンション → フロントタイヤ → ミッションオイルを抜く → ドライブシャフト片側。ここまで午前3時間 実測
  4. 午後、残り片方のドライブシャフトを抜く。
  5. トルクロッドはエンジン側だけ外して上にはね上げておく。(車体側は付けたまま)
  6. センタービームとエンジンマウントを留めているボルトを抜き、チェーンをかける。
  7. サイドマウントのネジを抜く。ここで一度手を止め、エンジン周りでボディと繋がっている部分が残っていないか全周を確認する。
  8. エンジン摘出。降ろしたらその場でミッションと分割しておく(一体だと移動が大変)。
  9. ガソリンを抜いて燃料タンクを外す。
  10. ダッシュボードを外す。手順は下の引用のとおり。
エアコン関連のレバーの頭とパネルを外し、ネジ3本を外す。オートチョークのノブを外して、根元のカラーを回して外す。 ※オートチョークのノブは横からネジで止まってるのだ。 先人のメモ — ダッシュボードの取り外し方
センタービームは先に外す 付けたままだとチェンジエクステンションのエンジン側が抜けにくい。結局あとで外して付け直すことになる。
車庫の幅はそれほど余裕がないので、ドアにタオルを数枚重ねてかけて、左右に当てた状態で作業しました。 先人のメモ — 狭い車庫での養生
作業前のカブリオレ
作業前。実家の車庫にて
外装と補機を外したエンジンルーム
灯火類・バンパー・グリル・ボンネット・ラジエター等を外したところ。「外すのは結構簡単」
吸気系を外した状態
コントロールボックス、エアクリーナー、エア関連パイピングを撤去
チェーンをかけたエンジン
トルクロッドをはね上げ、センタービームとマウントのボルトを抜いてチェーンをかける
センタービーム周辺
センタービームは先に外した方がやりやすい。載せる時も結局外して付け直した
ダッシュボードを外した室内
ダッシュボードを外した図。狭い車庫なのでドアにタオルを重ねて掛けて養生している
DAY 2

室内を這う燃料パイプ3本を移植する

8h / 2人
今日のゴール:ドナーの内装を全部剥がし、床下を這う燃料パイプ3本を曲げずに取り出して、 カブリオレ側へ通し終える。この日が一番「効いてくる」作業。
  1. ドナーの内装を全部降ろす。フロント&リヤシート → フロアマット → インパネ → リヤ左側面のパネル。 朝9時に始めて10〜11時には室内が空 実測
  2. エンジンルーム側でエアコンのパイプを外し、室内のエバポレーター回りを外す。
  3. 燃料タンクと電磁ポンプ、パイプ類を外すと、ようやく燃料パイプの全体が姿を現す。
  4. パイプは3本。燃料の送り戻りキャニスターカブリオレ側は2本(送りとキャニスター)しかないので、1本増える前提で考える。
  5. 曲げないように引き出す。ここが一番気を使う。
  6. カブリオレ側も同じ部品を外して、配管を受け入れられる状態にしておく。
  7. 戻りとキャニスターの2本はサイドガーニッシュの直下を這い、左手あたりから外に出て燃料タンクへ繋がる。 ホイールハウス側から手を突っ込んで引き出す。
  8. カブリオレはサイドシルに補強が入っているため配管形状がそのままでは合わない。 少しずつ曲げて調整しながら収める。
  9. 固定はドナーで使われていたガイド(金属の留め具)+タッピングビス
エンジンルーム側と燃料タンク側への出口はカブにも同じように穴が3ヶ所開いていて、使わない1つはメクラ蓋が付いているだけだったので、 ここは加工無しでいける。 先人のメモ — 一番の朗報
カブの送り用パイプは、戻り用に転用できない 「カブの燃料送り用のパイプをブルの戻り用に使えるかと思ったが、管の太さが足りず、ブルから外したものを使う事にした。 それだけ燃料をばんばん送っているわけだ。」——戻り用はドナーから外した現物を使う。

キャニスター配管だけは楽ができる

キャニスターへの配管はドナーもカブリオレも同じ径だったので、カブリオレのものをそのまま流用。 ただしエンジンルーム側に出す穴の位置をドナーに合わせて変える(元は一番上→使っていなかった一番下の穴へ移動)。

ドナー車両
ドナーとなった銀のターボII。この日の目標は燃料配管の移植
内装を剥がした室内
朝9時開始、10〜11時には室内が空。シート・マット・インパネ・リヤ左側面パネルまで撤去
燃料パイプ3本
室内を這っているパイプ。燃料の送り・戻り・キャニスターの計3本。曲げないように取り出すのが大変
配管の取り回し
カブリオレは送りとキャニスターの2本のみ。1本多いので考えながら装着する必要がある
サイドシル付近の配管
カブリオレはサイドシルに補強が入っていて配管形状が合わない。少しずつ曲げて調整
エンジンルーム側の配管出口
エンジンルーム側の出口。上から送り・戻り・キャニスター行き。穴は3ヶ所とも元から開いている
固定したパイプ
送り用パイプはドナーのガイド(金属の留め具)+タッピングビスで固定
DAY 3

燃料タンクと電磁ポンプを載せる

4h / 2人
今日のゴール:タンクを積み、チューブを新品に替え、電磁ポンプを固定する
  1. 燃料タンクの取り付け。これはそのまま付く
  2. 燃料系チューブ類を交換する。(ゴムホースは全数新品にする工程)
  3. 電磁ポンプの取り付け。ここが唯一の造作。
  4. 配管・チューブを繋ぐ。車の下からとホイールハウスからそれぞれ手を伸ばす作業になる。
電磁ポンプの取付ベースは位置が合わないブルの取り付けベース等は位置的に合わず、あれこれ思案した結果、 ブルでオーディオを留めるのに使われていた金属プレートを加工して使ってみる事にして、それなりに固定できた。」 ——ドナーを解体するとき、ステー・プレート類は形が使えそうなら全部取っておく。
配管やチューブを繋ぐ作業は父上に手伝ってもらい…この作業は一人では厳しいでしょう。 先人のメモ — 人手が要る工程
DAY 4

ハーネスを抜き、いま しか出来ない清掃をする

8h / 1–2人
今日のゴール:ヒューズボックスからエンジンルームへ伸びるワイヤーハーネスを抜きエンジンが載っていない今しか出来ない清掃を済ませる。
  1. ヒューズボックスからエンジンルームに伸びているワイヤーハーネスを外す。 この配線は室内から一旦フェンダー内を通り、そこからエンジンルームに入る—— ホイールハウスのインナーフェンダーを外さないと通せない。
  2. 室内の工具・ネジ・荷物を全部出す。オーディオとスピーカーボードも運び出す。
  3. 掃除機でインパネ裏のホコリ取り。劣化したスポンジ状の隙間テープを撤去し、カーペットも掃除機をかける。
  4. エンジンルームを磨く。泡状のクリーナーは「殆ど変わりばえしなかった」ので、研磨剤で端から磨く
  5. 順番は左手前 → 正面 → 右側 → ヘッドライト固定部プレートの外側。スポンジと歯ブラシで狭い隙間まで。

ここを飛ばすと二度とやれない

エンジンを載せてしまえば、バルクヘッドもインナーフェンダーの裏も一生手が入らない。 磨く・防錆する・隙間テープを貼り替えるのは、空っぽの今日しかない。 先人も「腰も指先も痛くなってきた」と書きながら最後までやり切っている。

取り外したハーネス
ヒューズボックスからエンジンルームへ伸びるワイヤーハーネス。フェンダー内を通るのでインナーフェンダーを外す
清掃中の室内
室内の荷物を全部出し、インパネ裏のホコリ取りから
磨く前のエンジンルーム
泡クリーナーでは変わらなかったので研磨剤で端から磨く
磨き上げたエンジンルーム
磨き上がり。ブレーキサーボの下あたりが見違える
DAY 5

小物とカプラーのステーを移植する

8h / 4人
今日のゴール:エンジン本体ではなく「エンジンルームの受け側」をターボII仕様に作り替える。 この日を飛ばすと、エンジンを載せた後に留める場所が無い。
  1. ドナー側のステーを外す。小物やカプラー固定用のステーはドリルでスポット溶接部分をもんで取り外す。
  2. カブリオレ側の同じ位置に穴を開ける。
  3. ハンドナッター(ネジ穴付きリベット)を打ち込む。内側にネジ山が切ってあるので、そのままボルトで留められる。
  4. この方式でコントロールボックス・ヒューズ・イグニッションコイルのステーを移していく。
  5. レジスターの受けも作る(元は小さい負圧コントロールボックスが付いていた場所)。 反対側の同じ位置には、室内のコンピュータに繋がる配線の接続コネクターが固定される。
  6. 開けた穴には必ず錆止めをたっぷり塗る
カブとブルは「同じ顔・同じ形」でも中身の配置が違う イグニッションコイルとリザーバタンクの位置が左右で逆。 カブはストラット側にリザーバタンク/コントロールボックス右にコイル、ブルはストラット側にコイル/ヘッドライト直後にリザーバタンク。
先人の結論:リザーバタンクは元の位置のまま、イグニッションコイルをレギュレーターの在った場所へ。 元の取付ステーを使ったが出っ張りすぎてバッテリーに当たるので、加工して横に逃がしている。
ヒーターホースの取り回しも違う トルクロッドの右から出ているヒーターのホースは、ブルではエンジン干渉(熱)を避けるためトルクロッドの上を通って左側から手前に伸びる形。 ドナーの取り回しに合わせて変更する。
ハンドナッターを打った箇所
中央2ヶ所がハンドナッター。内側にネジ山が切ってあるのでそのままボルトが使える
移植した小物ステー
コントロールボックス、ヒューズ、イグニッションコイルのステーを移植
ドナーの解体風景
移植作業をしているのは一人、他はドナーからパーツを剥ぎ取っている
DAY 6

降ろす → 直す → 載せる

8h / 3人
今日のゴール:ドナーからエンジンを降ろし、降りている間にしか出来ない整備を全部済ませ、 カブリオレへ搭載して3箇所のマウントを仮止めするところまで。山場だが、実は一番すんなり進む日。
  1. ドナーをジャッキアップして馬をかける
  2. チェンジロッドのピンを打ち抜く。
  3. エンジンのアンダーマウントのネジを抜く。
  4. トルクロッドを外す。
  5. エンジンを降ろす。降ろすと車のフロントが相当上がる。馬の掛け直しに注意
  6. ミッションを外す。
  7. クラッチ板とレリーズベアリングを交換する。降ろした今しか出来ない
  8. タイミングベルトを交換する。同上
  9. エンジンを洗浄する。市販のエンジンルームクリーナーをかけつつブラシでこする。 アルミブロックの綺麗な地が出てくる。
  10. 搭載。エンジンクレーンで引き上げ、3人で位置を見ながら入れる。
  11. 3箇所のマウントを仮止めし、取り回しと取付場所を確認しながら周囲の配管・配線を繋いでいく。
エンジンを降ろすのと逆の手順ですんなり入れられた。3箇所のマウントを仮止めし、 それぞれ取り回しや取り付け場所を確認しながら次々に周囲の配管と配線を繋いでいった。こういう作業はとても楽しい。 先人のメモ — 搭載当日

この計画ではこの日が「降ろす」から「仕上げる」に変わる

エンジン一式が別に手元にある構成なので、ドナーから降ろす工程(手順1〜6)は不要。 代わりに台の上でクラッチ・レリーズ・タイミングベルト・オイルシール・ウォーターポンプまで一気にやってしまえる。 載せてから「やっぱり替えておけば」となるのが一番高くつくので、ここで全部済ませる。

降ろしたエンジン
ドナーからエンジンを降ろしたところ。ヒーターコアから出るパイプがトルクロッド付け根の上を通る
エンジン単体の整備
ミッションを外し、クラッチ板とレリーズベアリングを交換。続いてタイミングベルト交換
ステーの移植作業
燃料パイプ固定用ステーの移植。サスの裏側から手が入るのでボルト&ナットで固定
洗浄中のエンジン
エンジン洗浄。クリーナーとブラシでアルミブロックの地が出てくる
搭載作業
エンジンクレーンで吊り上げ、3人で位置を見ながら搭載。降ろす逆手順ですんなり入った
搭載後のエンジンルーム
載ったエンジン。赤いヘッドカバーが眩しい

降ろしている間にやる整備ENGINE ON STAND / 純正パーツカタログの分解図つき

タイミングベルト周りの分解図
FIG E1100タイミングベルト。降ろしている今しか替えられない。先人もこの日に交換講習会をやっている
クラッチとフライホイールの分解図
FIG E1801クラッチ板。ミッションを割った状態でしか交換できない
クラッチレリーズの分解図
FIG M1300レリーズベアリング。クラッチと同時に。品番はPE6系で例外的にターボII専用
ウォーターポンプの分解図
FIG E1501ウォーターポンプとサーモスタット。載せてから漏れると全部やり直しになる
DAY 7

補機・冷却・過給をまとめる

8h / 2人
今日のゴール:ACG・コンプレッサー・ラジエター・インタークーラーの収まりを決めるここで一番大きな設計判断が出る。
  1. ACG(ACジェネレーター)とコンプレッサーを固定する。
  2. ベルトの張り調整。
  3. クーラーの配管をしてみる——ここで形状違いが露見する(下の落とし穴)。
  4. キャニスターを取り付ける。
  5. ラジエターを固定。下側の取り付けベース形状がドナーとカブリオレで違う。
  6. バルクヘッドを固定。
  7. クーラーコンデンサを固定。
  8. インタークーラーが入るかを確認する。ここが分岐点。
ラジエター下側の取り付けベースが違う 「ラジエター下側の取り付けベースの形状がブルとカブでは違い、溶接が必要だったので、 カブのものをそのまま使う事にした。もし容量が足りないようだったらコア増しという手もあるし。」 ——ラジエターはカブリオレ純正を使い、容量不足なら後からコア増しで対処するのが先人の判断。
インタークーラーが当たって付かないフィラーキャップの位置が違うのでインタークーラのユニットが当たってしまい固定できないので、 最終的に、インタークーラーレスにするという事に決まり、パイプを切って直接インジェクターに接続した。 そうするとラジエターファンのあたりがすっきりして良い感じ。」
——ただし別の先人(YASTUDIO号)は社外のターボI用インタークーラーを配管加工して装着している。 「IC無しで妥協」か「社外ICを加工して積む」かの二択がここで発生する。
ラジエター上部のパイプがエンジンに当たる 「ラジエター上部から出ているパイプが、エンジンの回転軸のあたりに当たってしまっているので、 ここはもう少し短くして前方にズラすかなにかする必要がありそう。」——載せてから気付く干渉。
接続後のエンジンルーム
エンジン回りはほぼ接続完了。ラジエター下側のベース形状が違うためカブリオレ純正を使う判断に
ラジエター周辺
ラジエター・バルクヘッド・クーラーコンデンサを固定。上部パイプがエンジン回転軸に当たる
DAY 8

結線と充填、そして初始動

8h / 2人
今日のゴール:エアコン配管・ヒューズボックスへの配線接続・油脂の充填・電装・顔回りまで戻して、 エンジンを掛ける
  1. エンジンルーム側のエアコン配管。
  2. ヒューズボックスへの配線接続。——ここが今日の本番(下参照)。
  3. ミッションオイルと冷却水を充填。
  4. 電気系統の配線を繋ぐ。
  5. 顔回り(バンパー・ボンネット・グリル・灯火類)を仮組み。
  6. メーター、コラムスイッチを繋ぐ。
  7. 燃料ポンプを何回か回して、各接続部から漏れが無いかを確認。
  8. エンジン始動。
  9. 問題無さそうなら試走。インパネは外したままメーターだけ固定し、シートとハンドルを付けて出る。
コネクターの「線の色」がドナーとカブリオレで違う 電磁ポンプが動かず、単体では動く・ヒューズボックスでも電圧は出ている——という状態で詰まった。 原因はカブのボディに残っていた配線のコネクタの線の色と、ブルのコネクターの線の色が違っていたこと。
車体後部の全ての配線が右側を通ってヒューズボックスに集まる。これをドナーから丸ごと移植するのは大変なので、 それぞれの線の役目を2人で確認して、ドナーのコネクターに差し換えていくのが正解。

結線の答え合わせ(先人の実績)

配線は基本的には殆ど同じ。ただし——

ドナー側で余ったのは:熱線とワイパーの線。
カブリオレ側で余ったのは:シートベルトのとアース。
ポンプ行きの線だけは、2つのコネクターのこの計画でもう片方へ移す結果になった。

繋ぎ終えて一通りチェックしたらバックランプだけがキーONで点灯してしまい、繋ぎ直して解決している。 「全部動くか」を1つずつ点けて確かめる時間を最初から見ておく。

配線作業
車体後部の配線は全て右側を通ってヒューズボックスに集まる。線の役目を確認して差し換えた
DAY 9

ダッシュボードを戻して、内装を復旧する

8h / 2人
今日のゴール:ダッシュボードを正規の位置に戻し、内装を組んで普通に乗れる車に戻す
  1. 地味な下ごしらえ。剥がれかけているテープを巻き直す/取れた圧着端子を付け直す/ 外気取り入れ口の回転ドアの折れた樹脂パーツを交換する。
  2. ダッシュボードの取り付け。重量があるので2人で。何度かやり直して正規の位置に配線を固定する。
  3. ヒューズボックスは最後に取り付ける。これが手順
  4. 灰皿・小物入れ・メーター・ハンドルコラムカバーを装着。
  5. 室内を一度掃除してからシートとハンドルを取り付ける。
  6. バンパーを再度外してホーンを取り付け、戻す。
  7. 試乗。
前日既に体験しているが、相当速くなった。 先人のメモ — 試乗
復旧した室内
メーター・コラムカバー装着後に室内を掃除し、シートとハンドルを取り付けて試乗へ
DAY 10–12

電装の詰め(ここが一番地味に長い)

12h / 1人
今日のゴール:試走で見つかった不点灯・不動作を1つずつ潰す。 先人はここに3日(5/7 → 5/27 → 5/28 → 6/11)かけている。
  1. 試走後のチェックでライセンスランプ・メーターランプ・ブースト計が点灯しないことが判明。
  2. ブースト計=分解して調べたら一部ハンダ不良(経年劣化で浮いていた)。直せば復活。
  3. ライセンスランプとメーターランプサービスマニュアルの電装系回路図を見ながらテスターで当たっていきコラムスイッチからヒューズボックスへ伸びている配線の先のコネクターの配線が1本間違っていることを突き止めた。
  4. ヘッドライト周りの配線を元に戻す(前オーナーがいじっていた分)。フォグランプへの配線をやり直す。
  5. バンパー・グリル・ヘッドライトガーニッシュを戻して外側は元通り
  6. (先人はこの後、90年代前半のアコードのスイッチを改造してフォグ用スイッチを自作している)
ここで初めて「サービスマニュアルが要る」場面が来る 配線1本の間違いを突き止めたのは電装系回路図+テスター。 パーツカタログには回路図は載っていない。整備解説書(整備・構造編)は電装の詰めで必ず要るので、 作業を始める前に手配しておくのが正解(整備解説書は紙で入手する)。
エンジンの移植作業は実質約10日程、延べ20人てところでしょうか。なかなかやりがいのある作業でした。 この後はエアコンの真空引きとガスチャージをディーラーでお願いする予定です。 先人のメモ — 総括
作業前のカブリオレ
作業前。実家の車庫にて
外装と補機を外したエンジンルーム
灯火類・バンパー・グリル・ボンネット・ラジエター等を外したところ。「外すのは結構簡単」
吸気系を外した状態
コントロールボックス、エアクリーナー、エア関連パイピングを撤去
チェーンをかけたエンジン
トルクロッドをはね上げ、センタービームとマウントのボルトを抜いてチェーンをかける
センタービーム周辺
センタービームは先に外した方がやりやすい。載せる時も結局外して付け直した
ダッシュボードを外した室内
ダッシュボードを外した図。狭い車庫なのでドアにタオルを重ねて掛けて養生している
0
系統別

系統ごとに通して読むBY SYSTEM / 作業中に引くための章

F / 燃料系 — 「2本の車に3本を通す」

この換装でいちばん造作が要るのが燃料系。キャブのNAとPGM-FIのターボでは、そもそも本数が違う。

カブリオレ(NA・キャブ)
ターボII(PGM-FI)
通り道
ボディ側の穴
形状の壁
流用の可否
固定
電磁ポンプ
人手
火災リスクの分岐点 キャブ用の低圧ホースをPGM-FIの高圧側に流用すると滲み → 車両火災になる。 ゴムホース・ホースバンドは燃料用の新品で揃える。ここだけは費用を削らない。
燃料ポンプとベントチューブの分解図
FIG B302燃料ポンプとベントチューブ。電磁ポンプの取付ベースと配管の全体像はこの図で確認できる

W / ハーネス・電装 — 「色は当てにならない」

先人が一番時間を取られたのが電装。エンジンは1日で載ったのに、電装の詰めに3日かかっている。

エンジンルーム側の経路
車体後部
正しいやり方
余る線(実績)
移し替えが要る線
小物の位置
追加するもの
クリップ
組む順番
要る資料

C / 冷却系 — 「ラジエターはカブリオレ純正のまま」

ラジエター下側
容量が足りなければ
上部パイプ
ヒーターホース
ヒーターユニット
充填

B / 吸気・過給 — 「ICが載るかどうか」が最大の分岐

ここは先人2人で結論が割れている。どちらを選ぶかを先に決めておくと、D7で迷わない。

問題
案A:IC無し
案B:社外ICを加工
判断材料
初始動の前に必ずやること プラグを抜いてクランキングし、油圧警告灯が消えるまで空回しする。 タービンに油を回す工程で、省略するとドライスタートでタービンが死ぬ。 始動後はブースト配管の継ぎ目に石鹸水を吹いてリークチェック。
ターボチャージャー周りの分解図
FIG E302ターボチャージャーと触媒。ターボ配管は通販在庫ゼロ=ドナー現物取りが前提
エアクリーナーの分解図
FIG B101エアクリーナー。NAのキャブ用とは別物なので一式移植する

A / エアコン — 「室内側ユニットごと」

起きたこと
結論
だから
最後の仕上げ

S / 小物ステーの移植 — ハンドナッターという道具

外し方
付け方
裏から手が入る所
必ずやる
移す物
T

工具リストTOOLS / 記録に実際に出てくるもの+要るもの

これが無いと止まる

用意しておくと段違いに楽

L

教訓集LESSONS / 先人が実際にぶつかった順

いつ起きたこと対策
D1センタービームを付けたままでチェンジエクステンションが抜けにくいセンタービームは先に外す
D2カブの送り管を戻し用に転用しようとしたが管の太さが足りない戻り用はドナーの現物を使う
D2サイドシルの補強で配管がそのまま通らない時間をかけて少しずつ曲げる。急ぐと潰れる
D3電磁ポンプの取付ベースが合わないドナーの別部品(オーディオ固定プレート)を加工して流用
D5イグニッションコイルとリザーバタンクの位置が左右逆コイルをレギュレーター跡地へ。ステーを加工してバッテリー干渉を回避
D7エバポレーターの接続部形状が違う(配管後に発覚)室内側ユニットごとドナーのものを使う/全部品を「また使う物」として外す
D7フィラーキャップ位置違いでインタークーラーが当たるIC無しにするか、社外ICを配管加工して積むかを先に決める
D7ラジエター上部パイプがエンジン回転軸に当たる短くして前方へズラす
D8電磁ポンプが動かない(単体では動く)コネクターの線の色が車体間で違う。役目を確認して差し換える
D8バックランプがキーONで点灯繋ぎ直し。全灯火を1つずつ点けて確認する時間を見ておく
D10ブースト計が点かない経年劣化によるハンダ浮き。配線ではなく計器側だった
D10ライセンス/メーターランプが点かない回路図+テスターでコネクター内の1本違いを特定
D

資料の在り処DOCUMENTS / 何がどこにあるか

純正パーツカタログ
分解図と品番を引く
2冊の差分
先人の作業記録
整備解説書(サービスマニュアル)
PDF資料

作業を始める前に手配しておくもの

整備解説書だけは先に買っておく。D10の電装の詰めで必ず要るし、 ハブナットやボールジョイントのように推測で締めてはいけない箇所の答えもここにしか無い。 届くまでの間は、その2ヶ所を避けて進められる。

このページの手順・引用・写真は、2000年に実際にシティ カブリオレへターボIIのER型エンジンを換装した先人の作業記録 (YASTUDIO氏/metalmart.co.jp 内「エンジンスワップ」全7章)に基づく。著作権はYASTUDIO氏に帰属(私的アーカイブ)。
分解図はホンダ純正パーツカタログ 11SA702 収録のもの。部品差分はカタログ2冊の機械比較による自作データ。