カブリオレ(FA・ER型NA)にターボII用ERインタークーラーターボを載せる作業を、
手を動かす順番で書いたもの。
骨格は2000年に実際に同じ換装をやり遂げた先人の12日間の記録。それを日記から手順に組み直し、
純正パーツカタログの分解図と部品差分の実データを重ねてある。
チェックリストが欲しいときは 換装手順書へ。こちらは「どう動かすか」を書いた方。
この作業には2つの読み方が要る。日順で読むと「今日はどこまでやるか」が分かり、 系統別で読むと「燃料ラインは結局どうなっているのか」が最後まで通して分かる。同じ内容を両方の切り口で載せてある。
先人が実際に進めた順番。1日の作業量とその日に必ず終わらせておくことが分かる。 はじめて読むならこちら。
作業中に「この配管は何本で、どこを通すんだったか」を引くための章。 手が汚れている時に開くのはこちら。
時間や本数には「先人の実測」と「本手順書の見積り」が混ざる。混ぜると危ないので、 実測と付いているものは記録に書かれていた数字、 見積りと付いているものはこちらで置いた数字、と区別してある。
「載る」と言い切れる理由が3つある。感覚ではなく、カタログの実データと先例で裏が取れている。
| ① 受け側が同じ | ENGINE MOUNT図は共通15点・ターボII専用0点。 純正パーツカタログ2冊(カブリオレ 11SC701 / ターボII 11SA702)を43図まるごと機械比較して出た結果で、 エンジンを載せる受け側のボディはカブリオレとターボIIで同一。フレーム加工は要らない (→部品差分) |
|---|---|
| ② ミッションも同じ | ミッションケース・クラッチレリーズ・シフトアーム・ヘッドカバーも完全共通。 5MTを載せるための加工も無い |
| ③ 同型式なので車検が通る | カブリオレのNAもターボIIも同じER型。 型式が変わらないため、換装後もそのまま継続車検を受けられる(フル移植車の記事に明記) |
| 逆に、丸ごと移植が要るもの | 共通部品ゼロだったのは 排気系・点火系(コイル/バッテリー)・オイルフィルター周り・ACジェネレーターブラケット・クラッチケース。 ここはドナー車から現物を取るしかない |
| 見落とすと詰むもの | ハーネスクリップだけでターボII専用154点。 解体時に1つずつ回収しないと、載せた後に留める物が無い |
先人は2000年4月22日から6月11日まで、実働12日でやり遂げている。 本人の総括は「実質約10日程、延べ20人てところ」。日によって人数が1人〜4人と変わるので、 人日で見ると実感に近い。開始は朝9時、終了は18時(昼食1時間)と記録にある。
| 日 | やったこと | 人数 | 実働 | 人日 |
|---|---|---|---|---|
| D1 | カブ側を開けてNAエンジンを摘出。タンクとダッシュボードも降ろす | 2 | 8h | 2.0 |
| D2 | ドナーの内装を剥がし、室内を這う燃料パイプ3本を取り出して移植 | 2 | 8h | 2.0 |
| D3 | 燃料タンク取付・チューブ交換・電磁ポンプ設置(午後のみ) | 2 | 4h | 1.0 |
| D4 | 室内配線の整理、清掃、エンジンルームを研磨剤で磨く | 1–2 | 8h | 1.5 |
| D5 | 小物・カプラーのステー移植(ハンドナッター)/並行でドナー解体 | 4 | 8h | 4.0 |
| D6 | ドナーからエンジン降ろし→クラッチ・レリーズ・タイベル交換→洗浄→搭載 | 3 | 8h | 3.0 |
| D7 | ACG・コンプレッサー・クーラー配管・ラジエター・IC搭載可否の判断 | 2 | 8h | 2.0 |
| D8 | エアコン配管・ヒューズボックス結線・油脂充填・電装・顔回り | 2 | 8h | 2.0 |
| D9 | ダッシュボード復旧・内装戻し・試走 | 2 | 8h | 2.0 |
| D10–12 | 電装の詰め(ブースト計・ランプ不点灯の追跡)、フォグ配線、スイッチ製作 | 1 | 12h | 1.5 |
| 計 | 実働12日 実測 | — | 80h | 21.0 |
先人はドナードナー車1台だけを持っていて、そこから全部を剥がしながら進めた。 こちらはドナー車に加えてER型エンジン一式が別に手元にある。差はこう出る。
短くなる:D6の「ドナーからエンジンを降ろす」工程が要らない(エンジンは既に単体)。 その分、降ろす前に台上でクラッチ・レリーズ・タイミングベルト・シールを交換しておけるので、 載せてからバラす事故が減る。先人も結局この順でやっている
長くなる:ドナー車からハーネス・小物ステー・燃料配管・排気系・ACGブラケットを回収する作業は同じだけ要る。 しかもハーネスクリップ154点を1つずつ拾う手間が乗る。 解体は「降ろす」より「拾う」方が時間を食うと考えておく。見積り
この作業で時間を失うのは、たいてい「先にやっておけばよかった」という順番の問題。 先人の記録から、後戻りが実際に起きた場所を3つ抜き出す。






キャニスターへの配管はドナーもカブリオレも同じ径だったので、カブリオレのものをそのまま流用。 ただしエンジンルーム側に出す穴の位置をドナーに合わせて変える(元は一番上→使っていなかった一番下の穴へ移動)。







エンジンを載せてしまえば、バルクヘッドもインナーフェンダーの裏も一生手が入らない。 磨く・防錆する・隙間テープを貼り替えるのは、空っぽの今日しかない。 先人も「腰も指先も痛くなってきた」と書きながら最後までやり切っている。







エンジン一式が別に手元にある構成なので、ドナーから降ろす工程(手順1〜6)は不要。 代わりに台の上でクラッチ・レリーズ・タイミングベルト・オイルシール・ウォーターポンプまで一気にやってしまえる。 載せてから「やっぱり替えておけば」となるのが一番高くつくので、ここで全部済ませる。








配線は基本的には殆ど同じ。ただし——
ドナー側で余ったのは:熱線とワイパーの線。
カブリオレ側で余ったのは:シートベルトのとアース。
ポンプ行きの線だけは、2つのコネクターのこの計画でもう片方へ移す結果になった。
繋ぎ終えて一通りチェックしたらバックランプだけがキーONで点灯してしまい、繋ぎ直して解決している。 「全部動くか」を1つずつ点けて確かめる時間を最初から見ておく。








この換装でいちばん造作が要るのが燃料系。キャブのNAとPGM-FIのターボでは、そもそも本数が違う。
| カブリオレ(NA・キャブ) | 2本:燃料の送り/キャニスター |
|---|---|
| ターボII(PGM-FI) | 3本:燃料の送り/戻り/キャニスター。戻りが増える |
| 通り道 | 室内の床下を這う。戻りとキャニスターの2本はサイドガーニッシュ直下を通り、左手あたりから外に出てタンクへ |
| ボディ側の穴 | 加工不要カブリオレにも同じ位置に穴が3ヶ所開いている。 使わない1つはメクラ蓋が付いているだけ |
| 形状の壁 | カブリオレはサイドシルに補強が入っているため、配管がそのままでは通らない。 少しずつ曲げて調整しながら収める |
| 流用の可否 | キャニスター管=径が同じなのでカブリオレのを流用可(出す穴だけ一番上→一番下へ変更)。 送り/戻り=ドナーの現物を使う。カブの送り管を戻しに転用しようとしたが管の太さが足りなかった |
| 固定 | ドナーで使われていたガイド(金属の留め具)+タッピングビス |
| 電磁ポンプ | 取付ベースは位置が合わない。先人はドナーのオーディオ固定用金属プレートを加工して固定 |
| 人手 | 配管接続は車の下とホイールハウスの両方から手を入れるので2人必須 |
先人が一番時間を取られたのが電装。エンジンは1日で載ったのに、電装の詰めに3日かかっている。
| エンジンルーム側の経路 | ヒューズボックス → 一旦フェンダー内 → エンジンルーム。 インナーフェンダーを外さないと通せない |
|---|---|
| 車体後部 | 全ての配線が右側を通ってヒューズボックスに集まる。 ドナーから丸ごと移植するのは非現実的 |
| 正しいやり方 | 線の役目を1本ずつ確認して、ドナーのコネクターに差し換える。 色は違うカブとドナーで同じ機能でも線の色が違う |
| 余る線(実績) | ドナー側で余る:熱線・ワイパー / カブリオレ側で余る:シートベルト・アース |
| 移し替えが要る線 | 燃料ポンプ行き——2つのコネクターのうちもう片方へ移す |
| 小物の位置 | イグニッションコイルとリザーバタンクが左右逆。 コイルをレギュレーターの在った場所へ移し、ステーを加工してバッテリー干渉を回避 |
| 追加するもの | レジスター(元は負圧コントロールボックスがあった場所にハンドナッターで受けを作る)/ 反対側の同位置に室内コンピュータへの接続コネクター |
| クリップ | ターボII専用のハーネスクリップが154点。解体時に1つずつ回収する |
| 組む順番 | ヒューズボックスは最後に固定する |
| 要る資料 | 整備解説書の電装系回路図+テスター。不点灯の原因(コネクター内の1本違い)はこれで見つけている |
| ラジエター下側 | 取り付けベースの形状がドナーとカブリオレで違う。 ドナーのを使うと溶接が必要になるため、カブリオレ純正をそのまま使うのが先人の判断 |
|---|---|
| 容量が足りなければ | コア増しで対応する(載せ替え後の水温を見てから判断) |
| 上部パイプ | エンジンの回転軸あたりに当たる。短くして前方にズラす等の逃げが要る |
| ヒーターホース | ドナーではエンジンの熱を避けてトルクロッドの上を通り、左側から手前へ。 ドナーの取り回しに合わせる |
| ヒーターユニット | 先人はユニットごと付け替え、コアから出る配管の取り回しをドナーに倣って変更している |
| 充填 | 冷却水はエア抜き前提で少なめから。始動後、水温上昇→電動ファン作動→エア抜き完了まで見る |
ここは先人2人で結論が割れている。どちらを選ぶかを先に決めておくと、D7で迷わない。
| 問題 | ラジエターのフィラーキャップの位置が違い、インタークーラーのユニットが当たって固定できない |
|---|---|
| 案A:IC無し | パイプを切って直接インジェクターに接続する。 ラジエターファン周りがすっきりする。過給圧そのものは掛かるが吸気温は下がらない |
| 案B:社外ICを加工 | 別の先人(YASTUDIO号)は社外のターボI用インタークーラーを配管加工して装着している。 本来の性能を出すならこちら |
| 判断材料 | ドナーからIC本体・配管一式を回収できているか/ ターボ配管6点は通販在庫ゼロでドナー現物取りしかない(→部品の買い方) |
| 起きたこと | 配管してからエバポレーターから出ている接続部分の形状が違うことに気付いた |
|---|---|
| 結論 | 室内側のユニットもそっくりドナーのものを使う。 既に剥ぎ取った後だったので、ドナーの室内からパーツを拾い集める羽目になっている |
| だから | 教訓全てのパーツを、もう一度使う物として扱え—— 先人が本文中で唯一「教訓」と書いた一文 |
| 最後の仕上げ | 真空引きとガスチャージはディーラー(業者)へ。ここは自前でやらない |
| 外し方 | ドナー側のステーはスポット溶接部分をドリルでもんで取り外す |
|---|---|
| 付け方 | カブリオレ側の同じ位置に穴を開け、ハンドナッター(内側にネジ山が切ってあるリベット)を打ち込む。 そのままボルトで留められるのでとても便利 |
| 裏から手が入る所 | ボルト&ナットで固定する(サスの裏側など) |
| 必ずやる | 開けた穴には錆止めをたっぷり塗る |
| 移す物 | コントロールボックス/ヒューズ/イグニッションコイル/レジスター/ 室内コンピュータへの接続コネクター/燃料パイプの配管固定用ステー |
| いつ | 起きたこと | 対策 |
|---|---|---|
| D1 | センタービームを付けたままでチェンジエクステンションが抜けにくい | センタービームは先に外す |
| D2 | カブの送り管を戻し用に転用しようとしたが管の太さが足りない | 戻り用はドナーの現物を使う |
| D2 | サイドシルの補強で配管がそのまま通らない | 時間をかけて少しずつ曲げる。急ぐと潰れる |
| D3 | 電磁ポンプの取付ベースが合わない | ドナーの別部品(オーディオ固定プレート)を加工して流用 |
| D5 | イグニッションコイルとリザーバタンクの位置が左右逆 | コイルをレギュレーター跡地へ。ステーを加工してバッテリー干渉を回避 |
| D7 | エバポレーターの接続部形状が違う(配管後に発覚) | 室内側ユニットごとドナーのものを使う/全部品を「また使う物」として外す |
| D7 | フィラーキャップ位置違いでインタークーラーが当たる | IC無しにするか、社外ICを配管加工して積むかを先に決める |
| D7 | ラジエター上部パイプがエンジン回転軸に当たる | 短くして前方へズラす |
| D8 | 電磁ポンプが動かない(単体では動く) | コネクターの線の色が車体間で違う。役目を確認して差し換える |
| D8 | バックランプがキーONで点灯 | 繋ぎ直し。全灯火を1つずつ点けて確認する時間を見ておく |
| D10 | ブースト計が点かない | 経年劣化によるハンダ浮き。配線ではなく計器側だった |
| D10 | ライセンス/メーターランプが点かない | 回路図+テスターでコネクター内の1本違いを特定 |
| 純正パーツカタログ | 手元にある。ターボII 11SA702(E-AA)とカブリオレ 11SC701(E-FA)。 分解図と全部品番号・価格が引ける。換装関連12図・368部品を保存済み(→パーツ・工具・工程) |
|---|---|
| 分解図と品番を引く | 整備図鑑に52図・2,021点を収録した。品番でも部品名でも横断検索でき、消耗品の品番早見表と症状別のトラブルシュートも付いている(→整備図鑑) |
| 2冊の差分 | 43図を機械比較済み。共通/専用が部品単位で出ている(→カブとT2の部品差分) |
| 先人の作業記録 | このページの骨格。全文と写真34枚を保存済み(→載せ替え事例集/ 全記事検索) |
| 整備解説書(サービスマニュアル) | 未入手 締め付けトルクと電装系回路図はこれにしか無い。無料の電子版は見つからず、紙で買うしかない。 「シティターボ 整備・構造編 E-AA型」等がオークションに出る。相場は書籍類で落札平均約¥2,102 |
| PDF資料 | この車種の公式PDFは存在しない。1984年式でホンダの電子配信対象外。 出回っているのは紙のスキャンか、上記のマイクロフィッシュ由来の分解図 |
整備解説書だけは先に買っておく。D10の電装の詰めで必ず要るし、 ハブナットやボールジョイントのように推測で締めてはいけない箇所の答えもここにしか無い。 届くまでの間は、その2ヶ所を避けて進められる。
このページの手順・引用・写真は、2000年に実際にシティ カブリオレへターボIIのER型エンジンを換装した先人の作業記録
(YASTUDIO氏/metalmart.co.jp 内「エンジンスワップ」全7章)に基づく。著作権はYASTUDIO氏に帰属(私的アーカイブ)。
分解図はホンダ純正パーツカタログ 11SA702 収録のもの。部品差分はカタログ2冊の機械比較による自作データ。